釜ケ崎のまち再生フォーラム憲章


2004年10月23日更新版


この文書は、釜ケ崎のまち再生フォーラムを信頼されるNPOとするために、これまでの活動経験をふまえつつ、今後の活動の指針としようとするものです。別掲「運営ルール」を補完するものでもあります。固定的なものではなく、活動の成功や失敗から学ぶごとに不断に改善していくものとします。
なお、ここで述べていることは「まちづくりひろば推進スタッフ」(正会員)に対してのものであって、各種「ひろば」に参加してくる多様な意見や立場の人々に対してまで求めているものではありません。また、言うまでもなく、ここに書いていないことは重要でないわけではけっしてありません。
  
1 自分たちの根本目的(ミッション)に沿って活動する
「運営ルール」(案)3条をあらためて引用します。「釜ケ崎地域(あいりん地区)において、地域住民を中心としたコミュニティ再生のまちづくりを支援する。一人ひとりの暮らしや住まいへの支援と、地域全体の居住環境の向上支援の両面を追求する。とりわけその実現の過程で、地域に住む・働く・経営する・調査研究をする等の多様な人々や団体どおしの幅広い協働をつくりだすことを重視する。また、行政や企業とのパートナーシップを追求することによって、住民の暮らしとまち再生の充分な支援体制づくりに貢献する。」 

2 「まちづくりの目標」の共有化を深める
  これまでの経過の中で出てきたおおよその共通目標は次のようにまとめられます。
  @人々が自分と西成に誇りがもてるまちづくり
  Aさまざまなタイプの住民が仲良く安心して住み続けられるまちづくり
  B誰でもが社会「再」参加でき、その内実がゆたかなまちづくり
  ただし、絶対的な設定ではなく、不断の議論や実践の中でさらに改善し、深めていくものとします。ゆるやかなネットワークとしてだいじなことは「おおよその方向性の共有」です。

3 「まちづくりひろば」の運営・開拓推進と、そこでのコーディネーター活動に集中する
「まちづくりひろば」とは物理的な広場ではなく、フォーラム、ワークショップ、サロン、メーリングリスト等のことです。「まちづくりひろば」は次の機能をもちます。
人と人の出会いやつながりづくり、まちづくりに関する情報交換の場、共同のビジョンをつくる場、コミュニティビジネスなど事業化のアイデアやヒントを得る場、事業や運動の協働を促進する場。総じて、「人が集まり、語らい、まちづくりの起点となる場」(運営ルール5条)。
私たちはまちづくりの中での自分たちの具体的役割をおもにここに集中させます。
「ひろば」が充分に機能するには、単に「出会いや情報交換の場」を運営するだけでは不十分で、そこにはさまざまなしかけが必要です。フォーラムやワークショップ、サロン、インパクトのあるテーマや講師の選定など企画力が問われます。私たちはこのレベルアップをはかります。この運営をになうのは「ひろば推進スタッフ会議」(釜ケ崎のまち再生フォーラム正会員)であり、スタッフによるメーリングリストを開設しそこでよく議論しながら、知恵を出し合いながら、すすめます。

4 「住民とは誰か」を考える
 日雇い労働者だけが住民でもなく、町会や商店会所属の人々だけが住民でもありません。
現役日雇労働者・生活保護受給者・野宿生活者・簡易宿泊所経営者・商店会・町会・一般住宅居住者・地域内で勤務する人々など、この地域に生活基盤を置くさまざまなタイプの人々全体をさします。どちらかを排除するのではなく、私たちはそうした人々の共生と社会参加、再参加をめざします。

5 住民以外の人々とのよき協働関係の推進
  排外的な立場に立たず、当団体の目的に賛同する支援ボランティア・研究者や学生・ジャーナリスト等と力をあわせます。 

6 当事者第一
   私たちがまず何よりも大切にすることは、その活動や事業がその対象となる住民一人ひとり(当事者・利用者)にとってほんとうに利益になっているかどうか、その原点を問い続ける視点です。複雑な問題について判断に迷う場合は、この視点を優先して考えます。

7 「自立とは何か、支援とは何か」を常に念頭に入れる
 自立とは、孤立を恐れずだれにも頼らず生きていくことではなく、むしろその人が地域社会の中でさまざまな人々やしくみにささえられて安心して自己実現のための努力ができる暮らし方のことだとも言えます。支援とは、「やってあげる」ことではなく、その人がその人らしい方法やテンポでその人らしい暮らし方を自己選択できるように、諸条件を整えることでお手伝いをすることだとも言えます。そうした問いかけをたいせつにします。

8 活動の実績に誇りをもつ
  釜ケ崎のまち再生フォーラムは1999年に設立されて以後の活動の中で、さまざまな成果もあげてきました。たとえば、社会再参加や市民活動の視点を労働運動オンリーの地域に持ち込んだこと。単に「ホームレス支援」にとどまらず、いち早くまちづくり意識を地域に広めてきたこと。町会住民と労働者住民との中間に立ち、媒介役を果たしてきたこと。内外から人材(支援者)を豊富に集め、地域貢献に向かわせてきたこと。コミュニティビジネスの考え方を広め、サポーティブハウスなどの創造を促進してきたこと、などなどです。
 そうしたことに誇りをもつことは活動上、困難に立ち向かうときのたいせつなエネルギーです。

9 弱点・限界と向き合い、ネットワークを維持するための懸命の努力をする
  もともと、当団体は「多様な個人のゆるやかなネットワーク」です。地域の中での役割や責務においても、力量においても自ずと限界があります。実際、さまざまな弱さ、未熟さもつらい思いで経験してきました。個々人の弱点も容赦なく露呈されます。今後も発展途上の市民活動として失敗があるかもしれません。
それでもなおネットワークを存立させるために、「まちづくりビジョンの共有」とあわせて、「参加者どおしの信頼関係と他団体の活動に対する敬意」が不可欠です。
そのために、お互いの立場や手法や力量の違いを認め合いつつ、「敬意と信頼」関係維持のために懸命の努力をしあうことを誓います。

10 全体対処と個別ケアは両輪の関係
まちづくり運動体として地域全体に対処する取組み(ビジョンづくりなど)と、その中で起きる住民一人ひとりの生活困難に個別に対処する取組み(事例検討会など)は両方とも不可欠です。相互に必要としあっています(相互補完)。そのうえで肝に銘ずべきは、むしろ後者の取組みが人々の切実な願いであり、これをとてもたいせつにしなければいけないという点です。個別ケアの問題に真正面から取り組む諸団体やネットワークsと連携してこそ、釜ケ崎のまち再生フォーラムの役割もよりよく発揮されるものと位置づけて、活動していきます。

11 運動と事業も両輪の関係
運動論と事業論はまったく異なる発想法で成り立ち、これを明確に区別しなければ必ず混乱が発生します。同時に、これもまた相互補完の関係になります。まちづくり運動の中から人々が集まり個別事業が生まれ、そうした諸事業がうまくいくことが運動を助け、行政を含めたさらに広いつながりやマーケットができていって、事業も運動も助けていきます。私たちは経験の中で学んだ、このようなことをたいせつにしていきます。

12 その他、私たちは活動上、次のことをだいじにしていきます(一部は上記と重複)
      
@ 地域住民に向き合うときの基本姿勢
「住民(当事者・利用者)第一」「エンパワメントと自己決定」「権利擁護と自己実現」等の尊重

A 組織を運営するときの心構え
「目的遂行への強い意志」「透明性の確保」「団体としての政治的中立性の確保」

B 活動参加者どおしの関係
 「社会的市民的モラルの遵守」「信頼と敬意の関係」

13 そうしたことがどうしても守られない場合は、釜ケ崎のまち再生フォーラムの運営スタッフからは自らお引取り願うこととします。

14 こうして、「地域住民・支援者・社会一般の3方面から信頼を得る」、そういうNPO活動とまちづくり運動を私たちはめざします。




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